奈良で起業相談をする前に知っておきたい事業の考え方

起業のことを考えている方と話していると、
「がんばっているのに手ごたえがない」「この方向で続けて大丈夫か不安だ」
という声をよく耳にします。
公的機関の創業相談やセミナーなど、情報を得る場は増えましたが、
「そもそも事業をどう考えればいいのか」という段階でつまずいてしまうケースも少なくありません。
多くの場合、これまでのキャリアの延長で
「セリング思考(何をどう売るか)」から事業を組み立ててしまうことが、その理由のひとつだと感じています。
「いつか自分の店や小さな事業を始めたい」と考えている方に向けて、起業がつまずきやすい本当の理由と、
そこから一歩進んで「経営者の考え方」に切り替えていくための視点を整理してみます。

廣崎 海渡
奈良を拠点に、起業を考えている方や小さな事業を営む方の事業づくり・Web集客・補助金活用を支援している中小企業診断士です。
車の販売仲介やイタリアンカフェなど、自分でも小さな事業を続けてきた経験から、「ひとりの挑戦に、もう一人の味方を。」をテーマに、このブログで起業や事業づくりの考え方を発信しています。
- 奈良で起業・開業の相談先を探している方
- 起業したい気持ちはあるけれど、何から始めたらいいか分からない方
- 動き始めてはいるものの、このままの方向で続けていいのか不安な方
経営相談の場によく寄せられるお悩み
奈良で経営相談をしていると、
- 売上が伸びない
- 一生懸命動いているのに先が見えない
といったご相談をよくいただきます。
一つひとつ詳しく聞いていくと、悩みは次のような形にまとまっていきます。
- 集客のこと:思ったほどお客さまが来ない
- お金のこと:がんばっている割に、思ったほど利益が残らない
- 発信のこと:SNSで何をどう発信したらいいか分からない
どれももっともな悩みですが、ここで止まってしまうと「やり方」を変えることばかりに意識がいき、根本のモヤモヤが解消されにくくなります。
起業相談に行く前に、本来の事業の土台がどんなものかだけでも知っておくと、相談の時間を有効に使いやすくなります。
その奥にある共通点は「事業の土台がはっきりしていないこと」
こうした悩みの奥には、共通した“土台のゆらぎ”があります。
「この事業は何のためにやっているのか」
「誰のどんな変化を支えたいのか」
といった事業の出発点があいまいなままスタートしているという点です。
この土台がはっきりしていないと、集客の方法や価格、SNSのやり方を変えても「これでいいのかな」という不安が残り続けます。
どこに力を入れるべきか決めきれず、動いていてもスッキリしない状態になりがちです。
起業相談に行く前に、「そもそもどんな土台の上に事業をつくりたいのか」を知っておくだけでも、相談の時間がぐっと使いやすくなります。
多くに共通する原因は「セリング思考」
この土台のゆらぎの原因側にあるのが、私がセリング思考と呼んでいる考え方です。
セリング思考とは、
「何を売るか」「いくらで売るか」「どう売るか」から事業を考える
という発想です。
商品・サービス、価格、チラシやSNS・広告といった、「売り方・やり方」から組み立てていくイメージです。
この考え方だけで事業を続けると、
- 価格競争に巻き込まれやすい
- 売上はあるのにお金が残りにくい
- やることばかり増えて、忙しいのに手ごたえがない
といった状態になりがちです。
先ほど挙げた「集客・お金・発信」の悩みも、多くはセリング思考の延長線上で起きています。
先ほどの「うまくいかない理由」の多くは、セリング思考の延長線上で起きている結果と言えます。
なぜセリング思考になってしまうのか
起業を考えている多くの方がセリング思考になってしまうのには、自然な理由があります。代表的なものを3つだけ挙げます。
1. 「決める側」ではなく「任されたことをこなす側」だったから
会社では、
- 事業の目的や、どんなお客さまに何を提供するかを決めるのは「経営者・経営陣」
- その方針に沿って、商品・価格・販促などを実行するのが「従業員・担当者」
という役割分担になっています。

会社員時代に任されていたのは、多くの場合この「実行の部分(どう売るか)」です。
一方で、「何のために」「誰に」「どんな価値で」事業をするのかを、ゼロから決める経験は少ないまま、起業のステージに移ることになります。
その延長で起業を考えると、
とりあえず自分にできそうなサービスを決めて、
それをどう売るかを一生懸命考える
という形になりやすく、自然とセリング思考に寄っていきます。
2. 「やったことがあること」から考える方がラクだから
商品やサービス、SNSの発信は、これまでの仕事の延長でイメージしやすい領域です。

一方で、
- 自分の強みは何か
- 誰のどんな変化を支えたいのか
- どんな価値で選ばれる事業にしたいのか
といった問いは、慣れていないと考えるのに時間とエネルギーが必要です。
その結果、「自分がやったことがあること」「すぐ思いつくやり方」から考え始めてしまい、どうしても「売り方」の方に意識が寄ってしまいます。
3. 早く売上を作らなければ、というプレッシャーが強いから
起業すると、生活費や家賃、仕入れなどの支払いが現実的なプレッシャーになります。
「まずは売上を作らないと」
という気持ちが強くなり、短期的に売上につながりそうな情報ばかり追いかけてしまいます。
- とりあえずSNSを増やす
- とりあえずキャンペーンを打つ
- とりあえず値下げしてみる
といった「その場しのぎの手」が増え、ますますセリング思考に偏っていきます。
セリング思考のまま続けるとどうなるか(筆者の経験)
ここまでお伝えしてきたことは、私自身の経験とも重なります。
私は26歳で自動車仲介業を始め、その後カフェや不用品回収、パソコン教室など、いくつもの小さな事業に挑戦してきました。
どの事業も「これなら自分にもできそう」「需要がありそう」といった“手段ベース”の発想からスタートし、
- メニューはどうするか
- いくらなら来てもらえそうか
- どこに広告を出すか
といった「やり方」のことばかりを一生懸命考えていました。
売上はまったく無いわけではないのに、競争に時間とお金を使い、お金が手元に残らない状態が続きました。
「こんなに頑張っているのに、なぜうまくいかないんだろう」というモヤモヤだけが大きくなっていきました。
今振り返ると、
- 自分の経営資源(強み・経験・人脈など)は何か
- 誰のどんな変化を支えたいのか
- どんな価値で選ばれたいのか
といった「経営者としての土台」を決めないまま、やり方だけをいじり続けていたことが、つまずき続けた大きな原因だったと感じています。
起業相談を「考え方を整える場」にしてほしい
起業がつまずきやすい背景には、ノウハウ不足だけでなく、事業の見方そのもののクセがあります。
だからこそ、起業相談を
「売り方のテクニックを教えてもらう場」
だけで終わらせず、
「自分の強み・目的・目標・方向性を、一度立ち止まって整理する場」
として使ってもらえたらと思っています。
事業の土台を整理するとき、私はよく「0〜4」という順番で考える方法を使っています。
- 0:自分だけの強み・経営資源
- 1:なぜこの事業をやるのか(目的)
- 2:誰に届けたいのか(目標)
- 3:どんな価値で選ばれたいのか(方向性)
- 4:その価値をどんなサービス・価格・導線・集客で届けるのか(やり方)
ここでは詳しい説明は省きますが、「まず4のやり方から考えていたな」と感じた方は、一度0〜3側の問いに立ち返ってみるだけでも、見える景色が変わってきます。
この0〜4の考え方については、別の記事で詳細版と要約版をご用意しています。
あわせて、自分の事業に当てはめて整理できる「起業の0〜4整理シート(Googleスプレッドシート)」も無料で使っていただけます。
おわりに:奈良で起業相談をお考えの方へ
この記事では、
- 起業がうまくいかないとき、表に見える悩みはいくつかのパターンに分かれること
- その奥には「セリング思考(何をどう売るかから考える)」という共通のクセがあること
- そこから一歩進んで、土台側の問いに立ち戻る「経営者の考え方」に切り替えていくことが大切なこと
をお伝えしました。
まずは、ここまで読んで感じたことや、日頃から頭の中にあるモヤモヤをノートやシートに書き出しながら、
- これまでどんな経験をしてきたか(0:自分だけの強み・経営資源)
- なぜこの事業をやりたいのか(1:目的)
- 誰のどんな変化を支えたいのか(2:目標)
- どんな価値で選ばれる事業にしたいのか(3:方向性)
といった「0〜3」の問いにゆっくり向き合ってみてください。
奈良には、公的機関の創業相談やセミナーなど、起業の入口を支えてくれる場がたくさんあります。
- 奈良県よろず支援拠点(奈良県産業振興総合センター内)
- 各地域の商工会や商工会議所
- 市町村の産業振興課などの公的な支援窓口
といった場所では、創業や経営に関する相談を、無料または比較的低い負担で受けることができます。
限られた資金を「事業そのもの」に残しながら、必要な情報やアドバイスを得られる心強い存在です。
この記事が、ご自身の考え方を見直したり、
「まずはどこで相談してみようか」を考えるきっかけになればうれしいです。

